蛍石レンズの歴史
1950年ごろ、天然石を原料にして人工蛍石結晶を合成する技術が発明され、光学材料用途の道が開かれました。しかし蛍石に代表されるフッ化物の単結晶は、真空環境下1000℃以上の高温で育成しなくてはならず、高純度の大型結晶の量産化には装置や製造プロセスなど、多くの課題を解決しなければなりませんでした。
1968年、キヤノンオプトロンは世界に先駆け量産化に成功。翌年、キヤノン初となる人工蛍石を採用したカメラ用交換レンズ(FL-F300mm
F5.6:キヤノン製)が誕生しました。
鉱物に対する硬さの尺度の1つにモース硬度があります。硬さを設定した基準物質に対して1から10までの整数で表します。蛍石は硬度4で鉱物の中でも比較的やわらかい材質です。そのため、レンズに加工、研磨する際にキズが入りやすく、技術的に難しいとされてきました。
現在は高度な研磨加工技術が確立し、結晶製造から研削・研磨・蒸着まで一貫した製造をしています。
モース硬度
硬度 | 鉱物名 | |
---|---|---|
1 | 滑石 |
↑ 硬 |
2 | 石膏 | |
3 | 方解石 | |
4 | 蛍石 | |
5 | 燐灰石 | |
6 | 正長石 | |
7 | 石英 | |
8 | トパーズ(黄玉) | |
9 | コランダム(鋼玉) | |
10 | ダイヤモンド(金剛石) |